2010-01-01から1年間の記事一覧

大みそかにちょっと総括

とうとう今年も終わり。 今年は、夏の暑さが強烈過ぎて、秋の印象が薄い。夏の後にすぐ冬が接続された感じだ。ブログを読み返してみると、読書がつまみ食いばかりで、それぞれの本との付き合い方が浅いと痛感した。ただ、イタリアのファシズムについては、原…

各紙書評欄を「ごった煮」

今年もあと2日を残すのみ。 最近お世話になっている各紙書評欄にも、「今年の3冊」のような特集をやっていた。年末でバタバタしているので、とりあえず小生のアンテナにひっかかった書名と著作者などを「ごった煮」風のメモ書きにしてご紹介しておきます。…

ホルブルック外交の功罪

今月14日(現地時間では13日)、リチャード・ホルブルックが亡くなったとのニュースが流れた。彼の肩書は米国アフガニスタン・パキスタン担当特別代表だった。12月14日といえば、15年前、ホルブルックが成立に奔走したボスニア和平協定がパリで調…

金子みすゞと「やまとことば」の奥深さ

関東は冬の快晴が続く。体調もようやく戻ってきた。 日経書評欄(1212)で、中国文化研究者の加藤徹が、金子みすゞ(1903−30)の詩を紹介していた。 十しかない指でお星のかずをかぞえているよ。きのうもきょうも。 十しかない指でお星のかずをか…

糸井重里vs徳光和夫、「おしゃべり」の奥深さ

糸井重里の「ほぼ日」で徳光和夫との対談が続いている。これが非常に面白い。だまされたと思って読んでみてください。 http://www.1101.com/tokusan/2010-12-26.html 「しゃべりの秘術」を駆使した冗談だらけのおしゃべりを通じて、二人がお互いに理解しあっ…

グノーシスとレーニン

クリスマスなので、引き続きキリスト教関連の記事でも書きますか。あまりにベタな引用だと面白くない。ここは変化球でストライクをねらってみる。 本棚の隅っこに「はじまりのレーニン」(中沢新一、岩波同時代ライブラリー)を見つけた。ぱらぱらめくると、…

クリスマスにイエス誕生異説

今晩は、クリスマスイブ。ケチをつけるわけではないが、多角的考察という意味から、イエス誕生に関するユニークな日本人聖書学者の記述を紹介してみる。 イエスの誕生にまつわって福音書に伝えられた物語は、いずれも、その死後半世紀近くたってからつくられ…

トルストイ没後100年

毎日の書評欄が「トルストイ没後100年特集」をやっていた。 (ゴーゴリが断食自殺した1848年)この年、ロシア軍砲兵隊コーカサス駐屯下士官レフ・トルストイが処女作「幼年時代」を発表した。24歳だった。 私は最近、40数年ぶりに「幼年時代」を…

量子力学と絵画自立のジレンマ

各紙書評欄紹介の6回目です。 量子力学以前の物理学では、観察者を超えた、超越的な視点あるいは超越的な何かが仮定されてきた。例えば、相対性理論も光速を一定と仮定することで成り立っている。ところが、量子力学がもたらしたのは、そのような超越的視点…

佐々木中にアタル

通勤電車の3日間で、「切りとれ、あの祈る手をー<本>と<革命>をめぐる五つの夜話」(佐々木中、河出書房新社)を読了した。 確かに、この書き手の出現は、「事件」である。 最初は、「キャラが立ちすぎ」といささか引き気味に読んでいたが、途中から著…

各紙書評欄から(5)

芸がなくてすみません。書評欄シリーズ5回目です。 本書の価値は、「もっともバランスのとれ、充実した毛沢東伝」だという点にある。 著者はアジア地域を舞台に活躍したBBCのジャーナリストだった。「ポル・ポト」(邦訳08年)も誠実な評伝だという。 …

各紙書評欄から(4)

なかなか風邪が抜けない。体はだるいが寝込むほどではない。仕事や飲酒もなんとかこなせる。それだけに長期化しているのかもしれない。 こんなときはまとまってものを考えられない。そのせいもあり、各紙書評欄の旅は9月だったり、11月だったり。 進化の…

各紙書評から(3)

書評欄の散歩も10月にさかのぼってみました。 以前に井上ひさしさんに、こう言われた。つらいことや哀しいことは、普通に生きていれば体験できる。だから人間がんばって作らなきゃいけないのはユーモアなんだ、と。 伊坂幸太郎インタビュー 産経1003 …

各紙書評欄から(2)

新聞各紙の書評欄紹介の続きです。 著者と同じブルノ出身の作家クンデラはかつて、中央ヨーロッパにこそ物語の鉱脈ありと説いた。その主張の正しさを裏付ける、みごとな怪作にして快作である。 野崎歓評 「わたしは英国王に給仕した」(ボフミル・フラバル、…

各紙書評欄から(1)

ここ一カ月くらいの新聞各紙の書評欄をまとめ読みした。 大平正芳は、「40日抗争」の際、福田赳夫と自民党本部で大げんかして官邸に帰ってきて、私と一緒に昼食を取っていたら、「オレに万が一の時、誰を総理にしたらいいと思う」と聞く。答えられないと、…

お金持ちの貧乏人、中国の今

久々に「Newsweek(日本版)」(11月10日号)をのぞく。なんだか新鮮だ。世界中で起きている多様なニュースを、実に手際よくコンパクトにまとめてある。ネットにはできない、「紙の強み」を感じた。 この号の特集は「中国は先進国か〜経済大国に…

三島由紀夫vs「凡庸な死」

三島由紀夫の自決から40年がすぎた。 あの日、教室でどこからともなく「三島切腹」の情報が流れた。ちょうど「金閣寺」を読んでいたこともあり、ショックだった。家に帰ると、どのテレビ局も特番をやっていた。 それからしばらくマスコミは三島一色だった…

大政奉還、もっと複雑ぜよ

NHKの「龍馬伝」も残すはあと一回。8月以降、史実を無視してのマンガ的な龍馬英雄史観が目に余る。「だって、テレビだもん」と言われればそれまで。 スタート当初は、若手タレントのかくし芸大会に堕した最近の大河ドラマの流れを断ち切って、「個人と歴…

「暴力装置」の続き

「暴力装置」なる言葉が久々に脚光を浴びている。せっかくの機会などで、もう少しいじってみたい。 広辞苑によると、「暴力」とは「無法な力」→ウェーバーの国家の定義を日本語に訳すと、「合法化された暴力の独占」→となれば、「国家」=「合法化された無法…

ウェーバーと「暴力装置」

「自衛隊は暴力装置」ー遠い昔に受けた大学での社会学の講義を思い出した。 もちろん、ウェーバーの学説紹介だ。国家の持つ「暴力性」を、レーニンの「国家と革命」ではもちろん否定的な意味に用いているが、ウェーバーは価値中立的に使っている。 しかし、…

視霊者の夢、おもろいカント

前日の続き。三浦雅士の「孤独の発明」(「群像12月号」)で紹介されていたカントの「視霊者の夢」の紹介が面白かった。 カッシーラーは「カントの生涯と学説」において、カントの「視霊者の夢」と「感性界と英知界との形式と原理」のあいだの驚くべき飛躍…

通勤電車と超越論的主観性

先日、図書館でコピーした「孤独の発明」(三浦雅士、「群像」12月号所収)を朝の通勤電車内で読む。超越論的主観性からライプニッツまで、話が少しぶれるが、満員電車の立ち読みにはちょうどいい。 木田元が「超越論的主観性」を「それ自体は世界を超越し…

塚本邦雄、反解説的解説の魅力

縊死もよし 花束で打つ 友の肩 小宮山 遠 「百句燦燦―現代俳諧頌」(塚本邦雄、講談社文芸文庫) 反リアリズムの鬼才、塚本邦雄による現代短歌の解説本。現実を疑うことを知らない「現実信仰」に囲まれ愛想がつきた時には、塚本節は余計にしみてくる。 この…

モネとジェローム、パリ対決

パリのグラン・パレでモネ展を観た。 これは、オルセー美術館の企画で、オルセーの威信をかけて、世界中から有名なモネ作品を集めている。ルーブル、オルセー、オランジュリー、マルモッタンと、名だたる美術館があるパリだが、これだけの質量の個人展はそう…

空中でのお楽しみ

ごぶさたです。仕事プラス私的分野での頼まれた調べもの(イタリア・ファシズム)で手いっぱいでした。 現在地はパリ。日々の雑用からちょっと逃げられたので、久々にアップします。それにしても、寒く、暗い。朝は8時すぎても明るくならない。ホテルのエア…

ノーベル化学賞と「生命の誕生」

ノーベル化学賞に日本人二人の受賞が決まった。無名の人がポジティブなニュースで突然、新聞の一面トップに登場するのは、日本ではノーベル賞のサイエンス部門受賞ぐらいだろう。 さて、お二人の功績は炭素結合に関する研究だという。炭素結合といえば、生命…

力作「悪人」、でも美男美女が難点

映画「悪人」を観る。吉田修一の原作は、ディテールを積み重ねた精巧な寄木細工だったが、映画は細部よりも大きな物語性に重点が置かれていた。監督の力技を感じさせる、力作だった。 評価したうえでの注文だが、地方都市に生きる青年の閉塞感を演じるには、…

奇跡をみた!「田中一村」展

先日、千葉市美術館で田中一村展を観た。最近は年間に数十回、展覧会場に足を運んでいるが、これは今年一番、揺さぶられた展覧会だった。 田中一村は、住みなれた千葉を50歳で離れ、単身、奄美大島に移住する。当時、沖縄返還前なので、奄美が日本の最南端…

書評「思想家の自伝を読む」を読む

新聞の書評から 自分探しなどするな、他者に徹底してこだわれ。これが著者の挑発である。ブログやツイッターに氾濫する自己露呈の強迫と手前勝手なナルシシズム。他者のまったき不在から刹那的につぶやかれるだけの言葉からは何の創造性も生まれない、と。<…

中台接近報道に驚き

前回のブログで、台湾で並んで売られていた蒋介石、毛沢東のキャラクターグッズに驚いた話を書いたが、その翌日の新聞に同様の記事が掲載されていて、偶然のタイミングに驚いた。 記事は、150体もの蒋介石の像が並ぶ台湾の慈湖紀念彫像公園に、大陸から中…