2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

劉生の多面性と苦悩

大阪市立美術館の岸田劉生展をのぞく。 以前に東京で観たことはあるが、24歳のときに描いた「道路と土手と堀(切通之写生)」が一番のお目当て。有名な麗子シリーズよりも、私としては、こちらに魅かれる。 遠近法のゆがみの影響か、坂道が画面中央で不自…

「やがて来たる者へ」の被害者史観

イタリア映画「やがて来たる者へ」を観た。 第二次大戦中、北イタリアで起きたナチスによる農民虐殺事件をテーマにした映画だが、「第二次大戦のイタリア」といえば「日独伊三国同盟で最初に負けた国」のイメージしかない日本では、なぜナチスとイタリア人が…

カダフィ死亡か?

都内で、スペイン人の美術関係者を囲んでメシを食っていたら、一人のスペイン人が自分のスマホをのぞき、「おい、カダフィが殺されたらしい」とアナウンスした。なんでも、美術館でカダフィを案内したことがあるという。「オレも、四半席前に、カダフィの5…

「悟り」とは思い出すこと也

久々に、論語研究会の「講師曰く…」 プラトンのイデア論では、人間は生まれる前にすでにイデアを見ている。そこで、真理は「思い出す」ものになる。「善」は人間に本来備わっているものとする儒教の考えもそれにちかい。 儒教の性善説は、パソコンに例えれば…

娘が父の死を映画にした

映画「エンディングノート」を観た。 ガンで死に行く父を実の娘が撮影したドキュメンタリー映画。これだけ聞くと、「かんべんしてくれ」って気になる。ただ、「ほぼ日」で糸井重里が、「お涙頂戴映画」とは違った角度からの評価だったので、映画館に出かけて…

辛亥革命は第二の明治維新?

朝日新聞10月9日付けの書評欄から、ピックアップ。 「孫文の辛亥革命を助けた日本人」(保阪正康、ちくま文庫)は、宮崎滔天や山田良政・純三郎兄弟などがいかに献身的に中国の革命に関わったかを分かりやすく叙述している。 興味深いのは、孫文を慕う日…

西郷が毛沢東の先駆者!

先々週の読売新聞書評に載っていた哲学者・野家啓一の紹介が面白かった。 著者(渡辺京二)は西郷を「異界の人」と呼ぶ。死者の国に半身を浸し、死者との連帯に生きる人、という意味である。彼の心情は常に寺田屋の変や戊辰戦争の死者と共にあった。 そうし…

RTFと上原ひろみ

風船子は、音楽に対して感情的な反応はできるが、文章や絵画に対するように作者からのメッセージをうまく捉える事ができない。したがって、感想は書けても、評論として成立しない。ある種の不感症だとおもう。 むろん、「それでいいじゃないか」という立場も…

フジタとシラス丼

ぶらりと湘南へ。 鎌倉で下車して、鶴岡八幡宮境内になる神奈川県立近代美術館鎌倉をのぞく。「開館60周年 ザ・ベスト・コレクション」が開催されていた。 藤田嗣治の「職人と女中」が面白かった。顔の描写が大友克洋を思い起こさせた。外国人の眼に映る「…