2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

保守主義の劣化

「保守」とは、本来的に損な役割を担いつつ、しかも黙って泥をかぶる存在であり、だからこそ市井の無言の信頼があったのである。軽薄で声高な「保守」派は、軽薄でかしましい「進歩」派よりも社会にとってはるかに始末が悪い存在であるということは、まとも…

小さなサボり、大きな自由

ミック・ジャガーと忌野清志郎が歌い続けている間は、何となく自分も大丈夫な気がしていた。片方が去ってしまったわけだけれど、人生の残り時間を計算せずにまだ悪あがきを続けよう。 RCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」が発表されたのは一九八〇年…

ソシュールの孤独

日曜の楽しみは、新聞の書評欄だ。読売の書評欄では、買う気になった本が2冊あった。いずれも言語に関連がある。 まずは、「フェルディナン・ド・ソシュール <言語学>の孤独、「一般言語学」の夢」(互盛央、作品社)。 田中純(思想史家)の紹介文も魅力…

最強サラリーマン国家・中国

◆中国は最強サラリーマン組織 「北京は今」の番外編です。少し古いですが、中国の政治力の強さを「会社の人事における抜擢」から説明した記事があった。これは「日本の弱さ」を考える好例でもあるので、紹介します。 (中国は)一党独裁の強権政治と見られて…

北京は今(2)

「北京は今」の第二弾です。 新しいショッピングビルが並び、欧米のブランドの巨大看板が目を引く北京中心部の王府井(ワンフーチン)。「北京の銀座」といわれる市内有数の繁華街だ。 今風のファッションに身を包んだ若者が行き交う路上に、写真パネルが並…

北京は今(1)

先月、4日間の北京フリープラン・ツアーに参加した。昨年夏のモンゴル、今年の正月の上海と続いた私的な「極東ツアーシリーズ」の今回は第三弾。 北京は20年前の冬、飛行機の乗り換えのため北京空港で数時間待つことになり、その時間を利用して天安門周辺…

北京は今(3)

天安門広場、故宮、万里の長城、最新の巨大高層ビルなど、「大きいことはいいことだ」の中国的空間感覚には驚いた。しかし、意外性という観点から一番驚いたのが毛主席記念堂だった。 ツアー4日間の最後の朝。話のタネに毛沢東の遺体でもみるかと、天安門広…

実は荒削り、弥勒菩薩

京都・太秦にある広隆寺に立ち寄る。お目当ては、おなじみの弥勒菩薩(宝冠弥勒)。実はこれが初対面だ。通っていた高校に修学旅行がなかったため、多くの人が経験する修学旅行での「奈良京都初体験」を経ていない。人生の残り時間を計算する年になっての「…

「名文記者」の限界

「記者風伝」(河谷史夫、朝日新聞出版)を読む。 「名物記者」たちの列伝モノだが、褒める書き手も、褒められる「名物記者」たちも、僭越ながら「なんだか、いい気なもんだ」というあたりが読了の感想。「ブンヤの限界」を感じた。 ジャーナリズムは、絵画…

存在論と信仰

◆ハイデガーにおける存在論と信仰 In January 1919, he announced his breach with the ‘ system of Catholicism’ (p2) カトリック教会で働く父を持ち、10代でカトリックの厳格な学生寮で暮らし、カトリック保守派の活動も行い、聖職者になろうと修道院入…

久々のベルイマン

◆「鏡の中の女」 久々にベルイマンの映画を観た。 見所は、主人公の精神科医を演じたリヴ・ウルマンの演技力だろう。狂気に落ちていく演技は、芝居とは思えぬ迫力だった。大竹しのぶを連想した。 内容的には、「老いと死」、「エロスとタナトス」、「罪と贖…

波平がシャブ中!

◆日本政府と麻薬 内田樹が、「薬物汚染の原点は国策にあり」(中央公論10月号所収)の刺激的タイトルで、昨今の薬物報道では見られない、あるいは、マスコミが指摘できない角度から問題提起していた。 内田は、薬物汚染は戦後、何度かの大きな流行期があった…