奇跡をみた!「田中一村」展

 先日、千葉市美術館で田中一村展を観た。最近は年間に数十回、展覧会場に足を運んでいるが、これは今年一番、揺さぶられた展覧会だった。

 田中一村は、住みなれた千葉を50歳で離れ、単身、奄美大島に移住する。当時、沖縄返還前なので、奄美が日本の最南端だった。染色工として貧しく禁欲的な生活をおくりながら、亜熱帯の風物を濃厚なタッチで描いた。まったくの無名のまま69歳でなくなるが、80年代にNHKの日曜美術館で取り上げられ、一時、ブームが起きる。それから20年がたった。

 隠遁者としての物語を背景にした奄美時代の作品もすごいが、今回、おどろいたのはその神童ぶり。

 ホタルと松を描いた二枚の短冊は、なんと7歳の時の作品。模写したのかもしれない。そうだとしても、こんな枯れた絵を7歳のチビが模写すること自体、驚愕だ。短冊の右にある、白梅と蛤の長方形の二枚は、8歳の時に描いている。小学校2年生!

 中学生になると、掛け軸を手掛ける。大胆な構図の墨絵には「泥中君子」の見事な書が添えてある。

 偉人、天才に対する賛辞には、「人間みなチョボチョボや。おおげさに褒めよってからに」と冷淡な小生だが、この絵の前では珍しく「天才」の前に頭を垂れた。

 十代半ばでここまでくると、画家として生きていくことはかえって苦痛だったかもしれない。作風を変えながら、年を重ね、50歳をすぎて、大きく作品の基調を変える。


 今回もNHKの日曜美術館で紹介したせいもあり、千葉市美には連日、大勢の人が押し寄せ、とんでもないことになっているらしい。たしか今度の日曜まで。行ける人は行ってほしい。絶対に損はしないはず。

参考情報
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2243