2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

14歳母親、子供を絞殺して笑う

新聞の書評欄で興味深い本を知った。 もし生まれたばかりの嬰児の背中に足を乗せて首を絞める14歳の母を見たら、どう思うだろうか。我々の社会では犯罪と呼ばれるその場に立ち会った著者が思わず目を背けると、女たちは笑い出した。 本書は、アマゾンの広大…

沖縄の補助金依存体質

沖縄をめぐる問題は何一つ解決されていないが、ニュースの焦点は、沖縄問題から鳩山政権の命運に移ってきた。それゆえに、意地をみせて、このブログはテーマを沖縄に戻す。 本日の紹介は、「沖縄幻想」(奥野修司、洋泉社)。30年以上、沖縄に通っているノ…

ちょっと前の普天間基地移設問題(下)

引き続き、「『アメとムチ』の構図―普天間移設の内幕」(渡辺豪、沖縄タイムス)紹介の二回目です。 仲井真・沖縄県知事は今後の動向を左右する重要人物だが、この本にも興味深い記述がある。 知事選での仲井真の普天間基地移設問題に関する公約はわかりにく…

ちょっと前の普天間基地移転問題(上)

昨年暮れに沖縄に行った時、ジュンク堂書店那覇店で普天間基地問題に関する一冊の本を買った。「『アメとムチ』の構図―普天間移設の内幕」(渡辺豪、沖縄タイムス)という題の新書だ。筆者は、沖縄タイムスの記者。 これは、2006年2月から1年半、那覇…

儒教、仏教、道教の相互関係とは?

「儒教とは何か」(加地伸行、中公新書)の第5章「経学の時代(下)」の紹介。後漢から隋唐時代までの儒教、仏教、道教の相互関係について、示唆に富む指摘が満載されている。 少し長くなるが、お付き合いのほどを。短くするために、正確な引用ではなく、要…

死とは進化によって獲得された能力

死とは、進化によって獲得された能力 池田清彦 古本屋で生物学の論客である池田の本を立ち読みしていたら、上記の言葉にぶつかった。 単細胞のアメーバは2分裂して増えていくが、分裂が細胞の老化をもたらすことはない。つまりアメーバに自然死はない。しか…

「朱子で論語を読む」(3)

「朱子の論語集注を読む会」の第3回目の報告です。◆儒教はソフトパワー重視 「夫子、温良恭倹譲、以って之を得たり」 〜「之」は夫子(孔子)が諸国の指導者から相談される機会のこと。 孔子は、温(おだやか)、良(すなお)、恭(慎み深く)、倹(節制あ…

大手拓次の蛇

仮面のいただきをこえて そのうねうねしたからだをのばしてはふ みどり色のふとい蛇よ、 その腹には春の情感のうろこが らんらんと金にもえてゐる。 みどり色の蛇よ、 ねんばりしたその執着を路ばたにうゑな がら、 ひとあし ひとあし 春の肌にはひつてゆく…

母語を揺さぶる翻訳たるべし

ベンヤミンの翻訳論の紹介です。出典は、「哲学の歴史10−現象学と社会批判」(中央公論新社)。 この本は、書き手によってデコボコが激しいが、ベンヤミン、アルチュセール、アドルノ、ハーバーマスあたりの解説は有益だった。特にハーバーマス解説の三島…

「吉本隆明の転向論」解説

「吉本隆明1968」(鹿島茂、平凡社新書)を読んでいたら、面白い説明があった。 この箇所は、佐野学と鍋山貞親の転向に関連した記述。佐野と鍋山の二人は天皇制打倒を呼びかけた戦前の日本共産党の最高幹部で、獄中にあった昭和8年、「共同被告同志に告…

働きバチ2割の法則

会社員同士の酒席で「働きバチの法則」が話題になった。 「働きバチといっても、本当に働いているのは、その巣の働きバチのうち2割ぐらいしかいないらしいですな」 「残りの8割は何をしとるんですか」 「働いているフリだけですわ。ところが面白いことに、…

泣きながら、にらむ小沢一郎

先週の「週刊現代」での立花隆と野中広務との対談で、かつて盟友であった野中が、小沢一郎について注目すべき証言をしていた。 立花 小沢は東京佐川急便から金丸信がもらった5億円について、もともと金丸が考えていなかった検察との徹底抗戦路線を取るとい…

カネに執着するほど貧乏になる逆説

一年前の雑誌をめくっていたら、「言い得て妙」な解説にぶつかったので、紹介します。 出典は、「お金と学力、その残酷な関係の行方」(内田樹と刈谷剛彦の対談、「中央公論」2009年3月号)です。 例の如くの内田節。賛否いずれにせよ、なかなか急所を…

理想と現実

およそ健全な人間の行為、したがって健全な思考はすべてユートピアとリアリティとの平衡、自由意志と決定論とのそれ(平衡)を保持するものであるはずである。 徹底したリアリストは、事態の因果的生起を全く無条件に受け入れるために現実が変革できることを…

東アジア自己中心国家連合

本日は、「東アジアの思想風景」(古田博司、岩波書店)からの引用。古田は、東アジアとは、「中華思想を分有する自己中心的国家群」と指摘する。 十八世紀頃からは鮮やかな浮世絵が広まり、貨幣経済は未曽有の安定を見せた。そのような泰平の世が、「皇国」…

「シュール」の日本的誤解とは

「シュルレアリスム」をめぐる日本的誤解について、巌谷國士が力説している。参考文献は、「シュルレアリスムとは何か」(巌谷國士、ちくま学芸文庫)。講演をもとにした文章で少しくどいため、下記の文章は引用よりも要約に近い。 「新明解国語辞典」の説明…

アキノ家と修羅場

フィリピン大統領選で、ベニグノ・アキノ氏(50)が大差で当選を決めた。父親は、暗殺されたベニグノ・アキノ元上院議員。母親 は、昨年亡くなったコラソン・アキノ元大統領。もうふた昔前になるが、風船子はフィリピンに住んでいたこともあり、「息子が50歳…

現象学とうつ病

今日は、「現象学と鬱(うつ)病は相性が悪い」というお話。 現象学はフッサール以来、日常性の現実を括弧に入れて宙吊りにする、いわゆる「エポケー」ないし「現象学的還元」の操作を生命にしている。この現象学的態度が、躁鬱病者特有の対世界関係と根本的…

刀を持った百姓たち

文久3年(1863年)、幕府は将軍徳川家茂の上洛警護を名目に、浪士組を結成した。このなかには、近藤勇、土方歳三、沖田総司といった後に新撰組の主役たちが含まれていた。脱藩した過激な尊王攘夷論者などの不平浪士の取り込みが目的とされているが、構…

中東には手を出すな

「シャトル外交激動の四年」(ジェームズ・ベーカー、新潮文庫) 〜ベーカーはパパ・ブッシュ政権下の国務長官。国務長官時代は、ソ連崩壊、ベルリンの壁崩壊といった冷戦終結や第一次湾岸戦争など世界的大事件が相次ぐ。同書は、国務長官として世界中を飛び…

「名優」ブレア

久々に熱くなっている英国政治だが、5年前に書いた文章を思い出した。ブレア前首相の友人から聞いた話をもとにしたものだ。もはや過去の人になった感があるブレアだが、日本で持たれている印象とは違うかもしれないのでご紹介する。 日本では「人気のないネ…

面白くなってきた英国政治

英国総選挙は、保守党が第一党になったものの過半数に届かなかった。第二党は労働党で、大躍進が予測されていた自民党は議席数を伸ばせなかったが新政権決定のカギをにぎる議席は確保した。大方の予想通りの展開となったが、問題はここからの予想が難しい。…

「楚辞」の批評性

漢詩の古典「楚辞」所収の「漁父」を読む。 屈原は放逐されて後、江や淵をさまよい 沢のほとりを行きつつ歌っていた 顔色はやつれ、その姿は痩せ衰えていた 漁夫(詩の題は「漁父」となっている)がそれをみて、「高位にある御方がなぜこんなところにおられ…

注目!英国総選挙

いよいよ英国総選挙の投票が5月6日に迫った。ブレア政権が誕生した1997年の総選挙から連続3回、現地で選挙を「見物」したので、今回は遠く離れていても、他人事のような気がしない。 BBCによると、5月4日現在の世論調査では支持率は保守党35%…

久々のベルイマン

久々にベルイマンの映画を観た。作品は「鏡の中の女」 見所は、主人公の精神科医を演じたリヴ・ウルマンの演技力だろう。狂気に落ちていく演技は、芝居とは思えぬ迫力だった。大竹しのぶを連想した。 内容的には、「老いと死」、「エロスとタナトス」、「罪…

超快作「第9地区」

◆超一級のB級作品 映画「第9地区」を観る。単純なようで複雑に作ってある快作だった。 始めから終りまで、大音響での撃ち合い、殺し合いが続き、エイリアンもどきの人体ドロドロ場面もたっぷり。 身体能力に秀でたエイリアンがなんで人間に反抗しないのか…

夫婦同姓は近代の産物

「儒教とは何か」(加地伸行、中公新書)から夫婦別姓に関する部分を引用、または要約します。 ◆夫婦別姓 儒教では、その人の姓を重んじており、現代でも中国、朝鮮は結婚によって改姓しない。日本も江戸時代までは姓を持つ人々の間で改姓の習慣はなかった。…