2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「ルイズ」、重いけど明るい

「ルイズ 父にもらいし名は」(松下竜一、講談社文芸文庫)、読了。大杉栄の末娘ルイズ(伊藤ルイ)の一生を追ったノンフィクション。 著者の松下竜一(1937−2004)は、豆腐屋さん出身の異色作家だった。高校時代に愛読していた雑誌「終末から」に連…

エジプトでの「革命と反革命」

中東政治研究者の池内恵が、エジプト情勢について見解を述べていた。いずれも執筆時点では、現在進行中のモルシ支持派デモと弾圧事件はまだ起きておらず、見解は七月はじめのクーデターによるモルシ政権転覆を受けたものだ。しかし、今後の情勢を考えるうえ…

あのYさんとバッタリ

近所の書店にある雑誌コーナー。隣の男性が雑誌を元の棚に戻そうとしていた。その雑誌は「文学界」だった。この本屋には週に1回は立ち寄っているが、「文学界」を立ち読みしている人を見たことがない。どんな人だろうとそっと横顔を見てみると…あっ、脚本家…

「風立ちぬ」、有能で倫理的人物の倫理的課題

宮崎駿の映画「風立ちぬ」を観た。 映画の主人公は、ゼロ戦の設計者として有名な堀越二郎がモデルになっている。風船子ら昭和30年前後生まれは、「戦争を知らない子供たち」だが、結構、太平洋戦争には詳しい。もちろん堀越は有名人だ。なぜなら、当時の「…

福島原発と天然原子炉問題

岩波書店のPR誌「図書」(13年7月号)を書店でタダでもらって冒頭の記事を読んでいたら、ショッキングな記述があった。 私を含む同位体地球化学を専攻する者の多くは、福島第一原子力発電所一号炉もメルトダウンした核燃料が再臨界を起こし、大規模な核…

「わたしの渡世日記」に、うなる

「わたしの渡世日記」(高峰秀子) 予感はあったが、驚愕した。四歳で母親に死なれ、叔母に養女としてもらわれ、五歳で子役デビュー、小学校もまともに通えずに一族郎党を養うために働き続け… 驚愕したのは、こうした凄まじい半生もさることながら、その文体…