2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

各紙書評欄から(2)

新聞各紙の書評欄紹介の続きです。 著者と同じブルノ出身の作家クンデラはかつて、中央ヨーロッパにこそ物語の鉱脈ありと説いた。その主張の正しさを裏付ける、みごとな怪作にして快作である。 野崎歓評 「わたしは英国王に給仕した」(ボフミル・フラバル、…

各紙書評欄から(1)

ここ一カ月くらいの新聞各紙の書評欄をまとめ読みした。 大平正芳は、「40日抗争」の際、福田赳夫と自民党本部で大げんかして官邸に帰ってきて、私と一緒に昼食を取っていたら、「オレに万が一の時、誰を総理にしたらいいと思う」と聞く。答えられないと、…

お金持ちの貧乏人、中国の今

久々に「Newsweek(日本版)」(11月10日号)をのぞく。なんだか新鮮だ。世界中で起きている多様なニュースを、実に手際よくコンパクトにまとめてある。ネットにはできない、「紙の強み」を感じた。 この号の特集は「中国は先進国か〜経済大国に…

三島由紀夫vs「凡庸な死」

三島由紀夫の自決から40年がすぎた。 あの日、教室でどこからともなく「三島切腹」の情報が流れた。ちょうど「金閣寺」を読んでいたこともあり、ショックだった。家に帰ると、どのテレビ局も特番をやっていた。 それからしばらくマスコミは三島一色だった…

大政奉還、もっと複雑ぜよ

NHKの「龍馬伝」も残すはあと一回。8月以降、史実を無視してのマンガ的な龍馬英雄史観が目に余る。「だって、テレビだもん」と言われればそれまで。 スタート当初は、若手タレントのかくし芸大会に堕した最近の大河ドラマの流れを断ち切って、「個人と歴…

「暴力装置」の続き

「暴力装置」なる言葉が久々に脚光を浴びている。せっかくの機会などで、もう少しいじってみたい。 広辞苑によると、「暴力」とは「無法な力」→ウェーバーの国家の定義を日本語に訳すと、「合法化された暴力の独占」→となれば、「国家」=「合法化された無法…

ウェーバーと「暴力装置」

「自衛隊は暴力装置」ー遠い昔に受けた大学での社会学の講義を思い出した。 もちろん、ウェーバーの学説紹介だ。国家の持つ「暴力性」を、レーニンの「国家と革命」ではもちろん否定的な意味に用いているが、ウェーバーは価値中立的に使っている。 しかし、…

視霊者の夢、おもろいカント

前日の続き。三浦雅士の「孤独の発明」(「群像12月号」)で紹介されていたカントの「視霊者の夢」の紹介が面白かった。 カッシーラーは「カントの生涯と学説」において、カントの「視霊者の夢」と「感性界と英知界との形式と原理」のあいだの驚くべき飛躍…

通勤電車と超越論的主観性

先日、図書館でコピーした「孤独の発明」(三浦雅士、「群像」12月号所収)を朝の通勤電車内で読む。超越論的主観性からライプニッツまで、話が少しぶれるが、満員電車の立ち読みにはちょうどいい。 木田元が「超越論的主観性」を「それ自体は世界を超越し…

塚本邦雄、反解説的解説の魅力

縊死もよし 花束で打つ 友の肩 小宮山 遠 「百句燦燦―現代俳諧頌」(塚本邦雄、講談社文芸文庫) 反リアリズムの鬼才、塚本邦雄による現代短歌の解説本。現実を疑うことを知らない「現実信仰」に囲まれ愛想がつきた時には、塚本節は余計にしみてくる。 この…

モネとジェローム、パリ対決

パリのグラン・パレでモネ展を観た。 これは、オルセー美術館の企画で、オルセーの威信をかけて、世界中から有名なモネ作品を集めている。ルーブル、オルセー、オランジュリー、マルモッタンと、名だたる美術館があるパリだが、これだけの質量の個人展はそう…

空中でのお楽しみ

ごぶさたです。仕事プラス私的分野での頼まれた調べもの(イタリア・ファシズム)で手いっぱいでした。 現在地はパリ。日々の雑用からちょっと逃げられたので、久々にアップします。それにしても、寒く、暗い。朝は8時すぎても明るくならない。ホテルのエア…