お金持ちの貧乏人、中国の今

久々に「Newsweek(日本版)」(11月10日号)をのぞく。なんだか新鮮だ。世界中で起きている多様なニュースを、実に手際よくコンパクトにまとめてある。ネットにはできない、「紙の強み」を感じた。


 この号の特集は「中国は先進国か〜経済大国になっても「大人の国」になりたくないピーターパン国家のひずみ」だった。多角的で具体的な中国のさまざな「顔」が紹介されており面白かった。

 中国の国防科学技術大学が開発したスパコン「天河1号」が初めて演算速度世界一を達成したと報じられた。「天河1号」の演算速度は毎秒2500兆回以上。現在のスパコンランキングで世界最速の米オークリッジ国立研究所にある「ジャガーシステム」の性能を40%も上回ったという。

 スパコン開発は軍事やエネルギーだけでなく、金融のような経済分野にも大きく影響を及ぼす。長年アメリカが世界一の座を独占してきたが、02年に日本の「地球シュミレータ」がその座を奪取。すると米政府は多額の開発費を投じて、2年後にトップを奪い返した。

 スパコンを開発した国防科学技術大学は人民解放軍傘下の組織。


 やはり、「2番」ではいけないようである。

 IMF国際通貨基金)は今も中国を「途上国」に分類している。しかし、今の中国は資産10億ドル以上の超富裕層が世界で最も多い国だという。

 中国は2兆6000億ドルの外貨準備を保有していながら、世界エイズ結核マラリア基金から過去8年間で総額10億ドル近くの援助を受けている。この金額は、同基金の被援助国の中で4番目に多い。

 「途上国」という立場と経済的実力の間の矛盾は、さまざまな局面で浮き彫りになっている。

 ある時はお金持ち、ある時は貧乏人。

 中国では欧米人のアーティストが大人気だという。

 ポーランドのかつての人気フォークバンド「バイエル・フル」が中国で新アルバムを来年1月リリースする。生産枚数はなんと6700万枚。収録曲の多くは中国語で歌われている。
 かつて故国でスターになったものの、その後は落ち目の欧米アーティストにとって中国は新天地。(ポップ音楽に関心のある)16歳から30歳の若年層だけで3億2000万人をかぞえ、その購買力は推定1350億ドルという。

 中国で今、「最もホットな欧米人」と呼ばれているのは、中国在住の米国人女優ケリー・ブローガンだ。(彼女は米国での俳優歴はなく、女優になるために中国に移住した)

 米国人として初めて北京の中央美術学院彫刻科を卒業したエリス。広大な空間と豊かな資源を持つ中国でなら、他国では不可能な作品も制作できる。「アーティストとして非常に自由だと感じる」と、エリスは言う。


 自由な中国!