2011-01-01から1年間の記事一覧

友川かずき、健在なり

友川カズキのコンサートに行った。これで三回目だ。最初は30年以上前だった。都内の公会堂のような場所だったと思うが、絶叫する独特の歌唱は衝撃だった。こんな歌があるのか。こんな歌手がいるのか。ただ唖然、茫然となった。激しくギターをはじくため次…

No more Hirosima は間違い

今日は、66回目の広島原爆忌。英語学習からみた「No more Hiroshima」問題を取り上げてみる。 引用文献は、「日本人が誤解する英語」(マーク・ピーターセン、光文社)です。 実は、“No more Hiroshima, no more Nagasaki” は英語になっていません。英語で…

ささやかに、記念日

今日は小生が初めて大気に触れてから「半世紀+α回目」の記念日。 別に感慨はない。出勤前に机に座る。まとわりつく湿気。風はない。微動だにしない葉をまとった木々は静止画のようだ。 たった一つの本棚から、詩集「嵐の前」(井坂洋子)を抜き出す。 …不思…

原田芳雄が逝った

昨日の朝、俳優の原田芳雄が亡くなった。 芸能人の生き死にに個人的に反応することはほとんどないが、原田芳雄死去の報には心が騒いだ。理由は簡単だ。私がファンだからだ。ファンといえる俳優は、これで全滅したのではないか。 原田芳雄を最初にテレビで観…

古代の隣人たち(河南3)

洛陽博物館に行く。2年前にできた巨大な新館だ。建築面積は4万2000平米もあるという。 だだっ広い展示室で、古代の中国人たちとにらめっこしてみた。一人ずつ表情を見ているとあきない。 人間の進化の歴史から言えば、2000年などはあっという間だ…

中庸無縁のタケノコ群(河南2)

中国・河南省の省都・鄭州に行く。河南省の人口だけで1億人だという。 上海、北京の高層ビル群にも腰を抜かしたが、鄭州も高層ビルが「雨後のタケノコ」のように林立していた。当地の中国人は、「五年前と比べても街は大きく変わった」と話す。これほどのス…

現在地、洛陽

本日、河南省の鄭州から洛陽に入った。 数年前に初めて行った北京、上海では、想像以上の近代化に腰を抜かしたが、内陸部の河南省でも高層ビルが雨後のタケノコのように林立していた。「過ぎたるは及ばざるがごとし」とは、この国のことわざではなかったか。…

佐藤優と「うのみ」問題

これまで「つまみ読み」をしていた「国家の罠」(佐藤優、新潮文庫)を遅まきながら通読した。非常に面白かった。商業的記事の成立要素は、つきつめれば「役に立つ」、「面白い」の二つにしぼられる。「役に立つ」とは具体的情報に富んでいること、「面白い…

金子みすゞの虚無

東京新聞夕刊(7月4日付け)文化欄の「金子みすゞの虚無」と題する記事が面白かった。筆者は、文芸評論家の尾形明子。 もし今、金子みすゞが私たちの心を捉えるとしたら、コマーシャルですっかり有名になったやさしい共生のイメージではなく、その詩が底知れ…

サンデル白熱教室の演劇性

佐々木毅の「民主政の不満(上・下)」(マイケル・サンデル、勁草書房)についての書評(110508、日経)を紹介す る。 著者は自らの立場を共和主義的と規定しているが、本書の議論の多くは、アメリカの公共哲学の歴史をリベラリズムと共和 主義の二つ…

北朝鮮は中国固有の領土?

毎日新聞に興味深い記事が載っていた。 朝鮮民謡「アリラン」が中国の無形文化遺産に指定され、韓国世論が憤激している。 アリランは地方によって違う。中国が無形文化遺産にしたのは、吉林省の延辺朝鮮族自治州に伝わる「延辺アリラン」だ。しかし韓国の怒…

森崎和江と谷川雁

「日本断層論」(森崎和江・中島岳志、NHK出版新書)読了。 「インドのナカジマ」が森崎の熱心な読者とは意外だった。中島は、丁寧に森崎作品を読み込んだうえでインタビューに臨んでおり、感心した。 内容的には、森崎の思索の紹介も貴重だが、やはり「…

関口存男とは

「ことばの哲学―関口存男のこと」(池内紀、青土社)読了。 独学の語学の天才と呼ばれたドイツ語教師の伝記。著者は池内紀。一般に知られていない独学者の天才ぶりを、講談のように読ませてくれるのかと期待したが、全体的には淡々とした評伝でいささか気が…

健康人にもがん細胞が…

「がんの練習帳」(中川恵一、新潮文庫)を読む。この種の本は、情報が命だ。この本は、読みやすく、具体例も豊富だった。情報部分の要約を並べてみる。 日本人の2人に1人がガンになり、3人に1人がガンで死ぬ。ガンの半数以上は治癒するが、それでも65歳以…

纏足と朱子学

久々に「朱子学読書会」の報告です。 子曰く、「民の義を務め、鬼神を敬して之に遠ざかる。知と謂うべし」(「論語」雍也第六) 講師曰く、孔子には「あの世」はなく「この世」しかない。天国も地獄もない。ただし、日常を超えた存在を否定しているわけでも…

発見!地面写真家・東松照明

名古屋市美術館で「写真家・東松照明 全仕事」を観る。 名古屋市美に行くのは初めて。タクシーは美術館のある公園の入り口で止まった。初老の運転手さんが「いやあ、すごい人気ですね。私も孫を連れてきたいけど、行列で待つのが嫌でね」。 えっ、東松の写真…

傍観者の原罪

「ヤノマミ」(国分拓、NHK出版)読了 以前、書評紹介で取り上げた「ヤノマミ」(国分拓、NHK出版)を読了。テレビドキュメンタリー制作のため、石器時代の生活を色濃く残すアマゾンの先住民の村に150日間暮したNHKディレクターのルポだ。 ※参照…

続「マイ・バック・ページ」考

映画「マイ・バック・ページ」の続き。「ユリイカ」6月号が、この作品の監督である山下敦弘の特集を組んでいたので別の角度からの評価も紹介したい。(コンパクトにするため、正確な引用ではなく、要約した) 大澤 真幸 要するに、これは、若いジャーナリス…

おバカに騙されるおバカ

映画「マイ・バック・ページ」を観る。 全体としては、製作側の真剣さはわかるが、「戯画」の域を出ていなかった。映画というより、「よくできたテレビドラマ」という印象を受けた。 土曜の渋谷で4割程度の入り。20代、30代が客の9割ぐらいを占めてい…

コラーゲンと科学リテラシー

コラーゲン食品の幻想。 コラーゲンを摂取しても、消化作用でいったんアミノ酸に分解されるので、コラーゲンがそのまま体内に取り入れられることはない。よって、食品で取ったコラーゲンがそのまま自分の体内でコラーゲンに再合成される確率は限りなくゼロに…

死んで元気になる

新聞各紙書評欄紹介、まだ続きます。 「孤独の部屋」(パトリック・ハミルトン、新人物往来社) ロンドンはうずくまる怪物。どんな怪物でも息をせずには生きられないから、ロンドンもこっそり有害な呼吸をしている。生きていくのに必要な酸素は、郊外からの…

キースと阪田寛夫

昨晩、キース・ジャレットのコンサートに行った。 即興演奏は即興を感じさせず、お決まりの奇声が間にはさまる。客席を埋めた中年男たちは、ノスタルジーに酔わせてほしいとカネを払った者たちだ。だが、みんながその気になり所定の位置にいるのに、なんだか…

オンナコドモからカミュまで

前回に続き、この二カ月間の各紙書評まとめ読みのまとめです。「書く」ためのリハビリには最適なので、しばらくこの題材を続けようかと思います。 それにしても、(この十年で日本は)なぜこれほどまでにもろい社会になってしまったのか。この十年の激変ぶり…

おひさしぶりです

お久しぶりです。 「こんな時期だからこそ、個人的記録も普遍的意味を持つ」などと偉そうにいいながら、なかなかブログを更新できなかった。情けなくもあるが、「何か」を得た実感もある。 新聞各紙の書評紹介から再開しよう。 最初は田村隆一全集の紹介から…

オヤジが逝った

現在地、パリ。ホテルからオペラ座まで散歩するが、土曜の早朝とあって人通りがほとんどない。浮浪者が二人、路上で倒れるように寝ていた。オペラ座の前には南京虐殺を題材にした映画の看板があった。この映画は、日本では上映されないだろうな。四日間で伊…

大震災、ささやかにブログ再開

ほとんど記憶に残っていない一年もあれば、一生忘れられない一瞬もある。東日本大震災後のこの10日間は、これから一生、何度も思い出し、語ることになるだろう。 震災時には、都内の美術館にいた。「美術館は免震構造なので大丈夫です」とのアナウンスが直…

血縁映画「息もできない」

韓国映画「息もできない」。ずっと前、予告編を見た時に気になっていたが公開時に見逃した。ようやく名画座系の映画館で見ることができた。 作品全体に力がみなぎっており、驚き、感心した。 韓国映画といえば、演技過剰、荒唐無稽のイメージがあったが、こ…

「あの日のリビア」断章

80年代半ばのリビア訪問記の続編です。 今の中東情勢は、未経験の新事態と古層の復活が、複雑にからまりながら同時並行的に進行しているように思える。いずれにせよ、現代史の行方を大きく左右する事態が現在進行形で動いていることは間違いない。 リビア…

あの日のカダフィ

いよいよリビアの首都トリポリで反政府デモが激化してきた。外国人記者の入国が禁止されており、正確な情報はわからない。しかし、情報が厳しく統制された警察国家の中枢で、今後の中東史を左右する大きな激変が進行していることは間違いない。 前回のリビア…

ちょっと昔のリビア訪問記

リビアで反政府デモが拡大している。エジプトと違い、ここでの反政府デモは文字通りの命がけだ。四半世紀前にリビアを訪問したことがある。これを機に記憶を整理しておきたい。***** 1980年代の半ば。日本のエライさんたちのグループに便乗してリビ…