コラーゲン食品の幻想。
コラーゲンを摂取しても、消化作用でいったんアミノ酸に分解されるので、コラーゲンがそのまま体内に取り入れられることはない。よって、食品で取ったコラーゲンがそのまま自分の体内でコラーゲンに再合成される確率は限りなくゼロに近い。つまり、「お肌つるつる」の宣伝文句で人気商品になっているコラーゲン食品の効用はほとんど期待できないということ。
お肌のお手入れには何の関心もないが、「科学リテラシー」という点では示唆に富む。
関連で福岡伸一のインタビューを紹介する。いつもながら、説明能力が高い。
「消化とは、他人の文章をアルファベットに解体して意味を消し、そのアルファベットを使って自分で新たに文章を作ることと同じ」と説明する。うまいなあ。居酒屋で女性相手に使える格好のネタである。
http://www.cafeglobe.com/cool/people/cp20080110.html
福岡: コラーゲンをたくさん食べれば肌がツヤツヤになるということは絶対にありません。科学リテラシーをどう考えたらいいかという糸口になるかもしれませんが、消化吸収の仕組みをちょっとでも知っていれば、そういうまやかしに騙されないで済むわけです。
コラーゲンはタンパク質の一種です。食品のタンパク質は牛や豚など他の生物の体の一部で、その生物の体の情報が書き込まれているものです。それが私たちの体に入ってくれば、その動物の情報が私たちの体の持っている情報と衝突していろいろな問題を起こします。食品アレルギーやアトピーがその例です。
青木: 移植した臓器が免疫反応で拒絶されてしまうのもそれですね。人間同士でも他人の体の一部がそのまま入ってくることはなかなか受け付けない。
福岡: そういうことが起こらないように、まずは消化をするわけです。消化は、大きい分子は吸収しにくいから小さくするというより、他の生物が持っている情報を解体することに意味があります。タンパク質は、普通はアミノ酸という比較的小さな分子まで分解されて初めて、消化管の粘膜を通過して体内に吸収されます。タンパク質が文章なら、アミノ酸はアルファベットです。邪魔な意味を持っていた文章をバラバラにしてアルファベットとして吸収し、そのアルファベットで私たちは自分たちの体用の文章(タンパク質)をもういちどゼロから紡ぎ上げるのです。
青木: そのアルファベットが肌のコラーゲンの材料に使われることはないんですか。
福岡: コラーゲン由来のアミノ酸も、普通のアミノ酸として体の中をグルグル回り、いろんな組織のさまざまなタンパク質の材料になります。一方で体内のコラーゲンは、どんな食品由来のアミノ酸からでも合成できます。つまり、食べたコラーゲン由来のアミノ酸が、直接、体内のコラーゲン合成の材料となる確率は、一分子もないとはいえませんが、極めて小さいものとなります。