中庸無縁のタケノコ群(河南2)

 中国・河南省省都鄭州に行く。河南省の人口だけで1億人だという。


 上海、北京の高層ビル群にも腰を抜かしたが、鄭州も高層ビルが「雨後のタケノコ」のように林立していた。当地の中国人は、「五年前と比べても街は大きく変わった」と話す。これほどのスピードと規模で近代化を進めた例は人類史上、おそらく例がない。現在、世界のセメント消費量の七割を中国が占めている、との説もあるが、このビル群をみると大げさではない気がしてくる。 

 
 ブレーキが内在化されていない近代化は加速し、暴走する。この巨大な近代化が制御不能になると、何が起きるのか。人口12億の中国を一人の人間のように擬人化して、親中だ嫌中だなんて牧歌的な床屋政談をやっている場合ではない。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」(論語・先進第十一)と中庸を説いた先人の言は、歴史のかなたに消えたか。

 トイレに行って小便器の前に立つと、目の前に小さな張り紙があった。「もう一歩前に出れば、文明的な大きな一歩になる」。あはは。
 
 こうしたユーモアが、ささやかながら内在的な制御装置の役割を果たしてくれればと小さな期待を抱いた。(ただ、これも大真面目な大国志向だと言われると、そんな気もするが)