死とは進化によって獲得された能力

死とは、進化によって獲得された能力
 
池田清彦

 古本屋で生物学の論客である池田の本を立ち読みしていたら、上記の言葉にぶつかった。

 単細胞のアメーバは2分裂して増えていくが、分裂が細胞の老化をもたらすことはない。つまりアメーバに自然死はない。しかし、生物は多細胞に進化することと引き換えに、その代償として「死」を支払うようになった。これは半ば常識だが、「死とは進化によって獲得された能力」というのは、要約としては見事な一文だったので、ここに記しておきます。「死とは能力である」か、うん、悪くはない。

 同じ単細胞でもゾウリムシは、分裂を繰り返すと老化現象が生じる。しかしゾウリムシ同士が接合すると減数分裂によって遺伝子の一部を交換して新しい核を誕生させるという。一種のセックスの原型のようなものでしょうか。

 この分野では、アポトーシス(細胞の自死プログラム)の研究者である田沼靖一が気になる存在。「アポトーシスー細胞の生と死」(東大出版会)、「遺伝子の夢―死の意味を問う生物学」(NHKブックス)あたりから読んでみたい。