理想と現実

およそ健全な人間の行為、したがって健全な思考はすべてユートピアとリアリティとの平衡、自由意志と決定論とのそれ(平衡)を保持するものであるはずである。

徹底したリアリストは、事態の因果的生起を全く無条件に受け入れるために現実が変革できることを認めようがなくなるのである。根っからのユートピアンは、因果的生起を否認することで、かれが変革をつよく求めている現実を知りその変革手順をつかむつてを見失ってしむことになる。

ユートピアンに特有の欠点はその主張の一本調子なところであり、リアリストに固有の欠陥はその思考が何も生まないことである。

 「危機の二十年 1919−1939」(E.H.カー、岩波文庫

 現実主義と理想主義との関係を考える良書。単純なシロクロ二元論が再び幅を利かせるようになった昨今、久々に再読したくなった。

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