中東には手を出すな

シャトル外交激動の四年」(ジェームズ・ベーカー、新潮文庫

 〜ベーカーはパパ・ブッシュ政権下の国務長官国務長官時代は、ソ連崩壊、ベルリンの壁崩壊といった冷戦終結や第一次湾岸戦争など世界的大事件が相次ぐ。同書は、国務長官として世界中を飛び回った1989年から1993年までの4年間のメモワール。自己正当化が鼻につく個所もあるが、当事者による貴重な記録だ。

 風船子は、米国が関与する大きなニュースが起きるたびに、この本で関連する部分を拾い読みしてきた。かなり前に出た本だが、「ここに出発点があったのか」、「今ならこれが有効かもしれない」など、国際政治の「今」を知るためにも有益な一冊だと思う。

 今回は、国務長官就任当時、パレスチナ問題についてニクソンから聞いた忠告を紹介する。

 国務長官に就任した当初から、私(ベーカー)は中東プロセスには関与したくなかった。…私はアラブ・イスラエル紛争は、解決すべき問題というより、避けるべき落とし穴と見なしていたというのが正直なところだった。

 議会の指名承認に先立って、私は大統領と国務長官の経験者たちを訪ね歩き、先輩としてのアドバイスを求めた。…最も遠慮のない発言をしたのは、思った通りリチャード・ニクソンだった。彼はこう言った。

レーガンは、これまでで最もイスラエルびいきの大統領だった。そろそろ公平な姿勢を取るべき時期だ。だが、中東問題は基本的に解決不可能だ。手を出さないほうがいい」

 いかにもニクソンらしいペシミズム。