超快作「第9地区」

◆超一級のB級作品

 映画「第9地区」を観る。単純なようで複雑に作ってある快作だった。

 始めから終りまで、大音響での撃ち合い、殺し合いが続き、エイリアンもどきの人体ドロドロ場面もたっぷり。

 身体能力に秀でたエイリアンがなんで人間に反抗しないのか。エイリアン語がなぜ解読できるのか…などと野暮な難癖は言うだけムダ。作っている方は百も承知だ。
侵略者のイメージが強いエイリアンを被害者の立場に逆転させ、支配者である人間の傲慢さを告発している、難民問題への強烈な問題提起、と言おうと思えば言えなくもないが、なんか違う。舞台は、かつては人種差別の本拠地だった南アフリカヨハネスブルクなので、エイリアンを黒人に見立てての反人種差別映画かと思うと、ここに出てくるナイジェリア人とされる黒人たちのまあ、悪いこと、悪いこと。ナイジェリアから抗議が来るんでないの、とこちらが心配になってくる。

エイリアン親子と半分エイリアンになりかけた主人公(人間)の心の交流あたりが、唯一の「明るい要素」だが、これとてどこまで本気だったのか、結局、観客は置き去りにされる。

おバカでお人好しの主人公を演じた男優は、アカデミー賞B級部門があれば主演男優賞ものの演技だった。

寓話として解読した方がよいのか、「ガハハ」と笑って済ませた方がよいのか、大いに悩み、大いに楽しませてもらった。


※公式サイト

http://d-9.gaga.ne.jp/#/SubScene/CastStaffScene/StaffScene