フジタとシラス丼

ぶらりと湘南へ。


 鎌倉で下車して、鶴岡八幡宮境内になる神奈川県立近代美術館鎌倉をのぞく。「開館60周年 ザ・ベスト・コレクション」が開催されていた。

 藤田嗣治の「職人と女中」が面白かった。顔の描写が大友克洋を思い起こさせた。外国人の眼に映る「モンゴロイドの薄情さ」といった類のものだ。「異人・フジタ」の真骨頂かもしれない。

 岩手出身の松本俊介の有名な「立てる像」が展覧会の目玉のひとつ。高田馬場駅周辺だそうだが、どこか東北大震災の被災地を連想させる。東京空襲前の昭和17年の作品だが、何か破滅を暗示する風景描写だ。それと対照的に中央に直立している青年は、陰りがなく、未来に向う気概がうかがわれる。この時期になぜこのような絵を描いたのか、知りたくなった。


 鎌倉駅に戻り、江ノ電に乗り稲村ケ崎で下車する。「海を見ながらビールでも」と思い、海岸に向けて歩くと、あった、あった、イメージをかなえてくれそうな店が。
レストランのテラスで、生シラス丼と江の島ビールで昼食。車がひっきりなしに通る目の前の道路が邪魔だが、ぜいたくは言えない。眼前に海原がひろがり、曇天の下に江の島がみえる。波は静かで、少人数のサーファーたちが苦戦している。

そろそろ、引き上げるか。