読書アンケ(2)
「みすず」の読書アンケート第二弾。
〜地下の高い東京西部を脱出して今やアナーキーな前衛美術、いや、あらゆる若者風俗が東京の東(右!)半分へと遁走しトンデモないクリエイティヴな空間を生み出しつつある。(大野英士)
・バーバラ・チェイス=リボウ「ホッテントット・ヴィーナス ある物語」(法政大学出版局)
〜19世紀初頭、南アフリカから連れてこられ、ロンドンなどで見世物にされたコイコイ族の女性が一人称で語る歴史小説。文化人類学や医学を装った偏見が罷り通り、五分も接していればわかる彼女の知性や人格は、傍若無人に踏みにじられる。実在の彼女の骨格はパリ人類博物館に展示され、死後180余年を経て2002年に故郷ハンキー村に埋葬された。(阿部日奈子)
・藤原辰史「ナチスのキッチンー『食べること』の環境史」(水声社)
〜インパクトの強さからすれば今年いちばんの本だった。ここで論じられているナチ政権下を中心としたドイツの台所の歴史は、わたしたちの「食」の歴史であり現在でもあるというわけだ。(桑野隆)
・バーバラ・エーレンライク「ポジティブ病の国、アメリカ」(河出書房新社)
〜ポジティブ・シンキングと根拠のない楽観主義は、競争の激しさと転落や失敗の不安におののくアメリカ人たちを慰める麻薬であり、失敗の自己責任を最終的に強調する社会維持の装置のようなもののように思われる。(大谷卓史)
・渡辺直己「日本小説技術史」(新潮社)
〜今年もっとも興奮しつつ読んだ本。作品の細部の具体に目が凝らされ、「小説という名の現場」に起こる「事件」が浮かび上がる。(山根貞男)
〜ここまで小説は読み込めるのかと驚かされる。(鈴木一誌)
〜気宇壮大な試み。読む方としても気合いを入れて臨まねばならない。(野崎歓)
※この本は複数の論者が取り上げていた。(風船子)