前衛主義者としての安倍

安倍政権ネタを続けます。

『政治が危ない』(御厨貴、芹川洋一、日本経済新聞出版社)から抜粋。二人とも、保守派に分類される立場で、安倍と直接、言葉を交わし、観察できる位置にいた。その二人の言葉なので、証言としては価値があるかも。

(御厨)ある派閥の領袖は「自分は安倍ちゃんのやっていることは、集団自衛権歴史認識靖国参拝、いちいち反対だ。でもせっかく与党に戻ったんだから4-5年はやっていたいよ。与党気分は楽しいからな」って言っていた(笑い)

 笑い事じゃないだろう。

(御厨)安倍は「何かをやっている感じが大事だ」と。「やった感」じゃないよ、「やってる感」ですね。
  僕が安倍さんにインタビューして、「アベノミクスは本当に成功したんですか」と聞いたら、「アベノミクスっていうのは『やってる感』なんだから、成功とか不成功とかは関係ない」と言うんですね。

(芹川)内閣官房副長官に警察官僚出身の75歳の杉田和博をずっと起用している。事実上の政治任命。菅と杉田で各省の幹部人事を仕切っている。

(御厨)安倍は根本的に人間を信用していない。一次政権後に多数から裏切られた。
昔は派閥連合政治なので、政権維持には多数派形成が必要。しかし、安倍は「自分はマイノリティだ」と自己規定している。「マイノリティは常に言い続けないと引っ張っていけない」と盛んに口にする。私は安倍は「前衛」だと思う。

 「フロントに立っている前衛は、勢力が少なくても精鋭であればよい。だからマイノリティそのものが増える必要はない」との発想。何も考えないマジョリティを先導する。これも人間不信の一面。ある意味、前衛党。前衛党は質的に同志的結合があればいい。岸のような戦前の革新官僚的発想に通じる。マイノリティであることが気にならない。

 それは基本的に後継者を作らないことにもつながっている。自分の後継者なんか信用していない。徹底した人間不信。そのうち仕方なく後継者も作るかもしれないけれど、それだって積極的にという気はまるでないんじゃないか。これは異常ですよ。


(芹川)自民党政権は自分で終わっていいと思っているんですかね。自民党は派閥が壊れて人材養成機能がなくなった。人材育成機能が内在しない組織は絶対にもちません。私も自民党は長くないと実は思っています。ポスト安倍は安倍。
 中堅は、自民よりも民進党の方が人材豊富。作戦参謀は安住淳玉木雄一郎も評価が高い。
 安倍は石破に警戒感。07年7月の参院選安倍自民党は大敗して9月に退陣。8月の代議士会で、小坂憲次、石破、中谷元後藤田正純(KING)の4人が安倍批判した。安倍はこれを根に持っている。

 安倍が前衛主義者という指摘は、面白い。