自衛隊の国連PKO参加に伴う法的矛盾

通販生活」最新号をパラパラめくっていたら、国連PKO活動と自衛隊との関係について、きわめて明快な説明をみつけた。意外な場所で意外な収穫だった。

2000年、私はインドネシアから独立が決まった東チモールに国連職員として派遣され、PKO部隊の幹部として1200人からなる多国籍軍を統括しました。

 ある日、ひとりの兵士が独立反対派の民兵に惨殺される事件が起こりました。それに対して、我々は武装ヘリを使って民兵を追いつめ、全員射殺しました。犯罪者として捕まえるのではなく、「交戦相手」として攻撃したのです。
射殺命令を出したことは今でも私のトラウマになっています。

発言者は、東京外大教授で元国連PKO幹部の伊勢崎賢治氏。

同氏の説明では、国連PKOは当初、当事者との中立性を重視し、戦闘が発生したら撤退するのが原則だった。この原則を適用して1994年のルワンダ紛争で撤退した結果、100万人規模の大虐殺が起きた。この反省から、PKO部隊は武器を使用しても現地住民を保護する責任がある、との考えに変わったという。

99年、当時のアナン国連事務総長が「PKO部隊は国際人道法を遵守せよ」との声明文を出しました。国際人道法とは、交戦時に守るべき最低限のルールを定めたもの。

つまり、アナン氏の声明の意味は「PKO部隊は交戦主体になれ」「住民を保護するためなら中立性をかなぐり捨てて武器を取れ」ということです。この声明以降、PKOのあり方はガラッと変わったのです。

私の「射殺命令」はこのアナン声明に従った結果でした。

 今、陸上自衛隊が派遣されている南スーダンは、まだ情勢が不安定で武力衝突の可能性は高い。派遣されている陸自部隊がインフラ整備を行う施設部隊であっても、武装勢力に追われた住民が駐屯地に逃げ込んで来たら、武装勢力と戦わなければならない。
 
 しかし、日本国憲法には「国の交戦権を認めない」とあり、自衛隊に認められているのは「正当防衛」の権利だけ。自身の「正当防衛」だけで住民保護はできない。ここには大きな法的矛盾がある。

 伊勢崎氏はこう指摘する。

本来なら「PKO部隊は交戦主体になる」と宣言された時点で日本は自衛隊の派遣をやめるべきでした。自衛隊の海外派遣を継続するなら、少なくとも国民投票憲法九条を改正して法的矛盾を解消する必要があります。