「短命化」という進化

 新緑がまぶしい。加齢のせいか、年ごとに新緑が美しくみえてくる。いや、「美しさ」以上のものにみえてくる。

 大木から草へ。大から小へ、長命から短命へ。実は、これが植物が選んだ進化だった。

 不思議なことに、植物は千年も長生きするような木本植物から、数年以内に枯れてしまうような草本性の植物へと進化を遂げてきました。すべての生き物が長生きしたいと願っているはずなのに、寿命が短くなるように進化しているのです。


 すべてのものは永遠にあり続けることはできません。そこで生命は、一定期間で自ら壊れ、その代わりに新しい生命を作り出す道を選びました。こうして命のリレーをつなぎながら、永遠であり続けようとしたのです。


 寿命が長すぎると環境の変化に対応できなかったり、事故に遭うリスクが高まったりします。そのため植物は、天命をまっとうするために短い命を選択したのです。


 稲垣栄洋・ 静岡大大学院教授(4月28日東京新聞夕刊)