「アメリカの戦争」映画2本

アメリカによる映画を2本観た。「アメリカン・スナイパー」と「ハーツ・アンド・マインド」。前者がイラク戦争を描いたクリント・イーストウッド作品、後者はベトナム戦争をテーマにしたドキュメンタリー映画

 「アメリカン・スナイパー」は、イラク戦争について賞賛しているのか批判しているのかで米国で論争になったそうだが、少なくともイラク戦争を正当化した政治的な映画ではない。イーストウッドは、戦争における兵士の役割を政治色に染まらないように描いている。「愛国的行為」としての側面と「職業的人殺し」である側面の両面から目をそらしていない。監督当時84歳!

 「ハーツ・アンド・マインド」は、被害者だけではなく、ケネディ、ジョンソン、ニクソンら米国大統領や南ベトナム政治指導者、米軍兵士など、ベトナム戦争を推進していた側の証言を通じてベトナム戦争を批判する作りになっている。

反対者ではなく、当事者たちの正当化の弁を通じて、その問題に否定的に迫る方法だ。成功すれば、これほど説得的なやり方はない。成否は、素材の編集にかかっている。腕前は見事で、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を取り、その後のベトナム反戦映画にも影響を与えた。感心したが、同じ当事者たちの証言をもとに、説得力のあるベトナム戦争肯定映画も作れるかもしれないと意地悪なことも考えてしまった。

 この二つの「米国による戦争」に共通点が多いことも再認識した。