追悼、飯島耕一

 体調はかなり回復したが、まだ自分に体があることを常に意識させられる。つまり、万全ではない。


 ヤフーニュースで、詩人の飯島耕一氏の死去を知る。享年83歳。個人的には、その詩作にはあまり反応しなかったが、追悼の意を込めて、二十前半に書かれた初期の代表作をあげてみたい。

鳥たちが帰って来た。

血の黒い割れ目をついばんだ。

見慣れない屋根の上を

上ったり下ったりした。

それは途方に暮れているように見えた。


空は石を食ったように頭をかかえている。

物思いにふけっている。

もう流れ出すこともなかったので、

血は空に

他人のようにめぐっている。


            「他人の空」


 終戦直後、一人の青年が空を見上げている。「鳥たち」とは「平和な日常」のことか。戦争は終わった。しかし、この作品は、直線的な「無念」や「歓喜」とは一切、無縁だ。途方に暮れ、頭をかかえ、血が他人のようにめぐっているばかりだ。

 飯島は、こうした違和感を抱えて戦後を歩きだした。