昭和の逆襲、シネパトス

銀座の地下でひっそりと生き延びていた名画座「銀座シネパトス」が3月31日に閉館した。


http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK31019_R30C13A3000000/

 
 この「小屋」があったのは、古ぼけた小さな地下街。そこは世界的ブランドが軒を連ねる銀座中心部のすぐそばにあるとは思えない、昭和の色濃いレトロ空間だった。


先日、この映画館の閉館をテーマに、この映画館を舞台にした映画「インターミッション」(樋口尚文監督)をこの映画館で見た。
おそらく平均観客は1回20人ー30人というオンボロ映画館だったが、秋吉久美子竹中直人香川京子佐野史郎らが出演している。おそらくノーギャラだろう。上映の間のインターミッション(休憩時間)に映画館の客席で交わされる多彩な客による会話をオムニバス形式に仕立てた映画。それにしても、今、自分が座っている映画館の客席を目の前のスクリーンで延々と観る経験は、奇妙で新鮮だった。時々、地鳴りのように地下鉄の振動音が聞こえる、信じられないような映画館だったが、映画の中でもその振動音が再現されていた。途中で、その振動音が現実のものか映画から聞こえてくるのか判然としなくなった。映画らしい虚実皮膜を堪能した。


名画座文化の象徴」が消えることへの惜別映画だったが、懐古趣味に陥っていない。前のめりで死ぬ気概を見せてくれた。

 監督樋口によれば、これは「みんなが楽しく無茶をやっていた昭和のアナーキーな精神をこれから未来に向けて『伝承』」していく作品」であり、ひとことでいえば「昭和の逆襲」であるという。


 「昭和の逆襲」か。これはなかなかイカス言葉だ。