恒例、読書アンケート(1)

 かなり遅くなったが、毎年恒例の月刊「みすず」の読書アンケート特集の紹介です。各界(といってもほとんどが大学のセンセイ)の約150人が2012年中に読んで印象に残った本を挙げている。個人的アンテナにひっかかった部分を抜粋します。


・王小波「黄金時代」(勉誠出版
文革世代の荒唐無稽なる青春を描いたユーモア文学の傑作。待望の邦訳。王小波は、サリンジャーキャッチャー・イン・ザ・ライ」や庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」に通じる作風を確立していたのだが、1997年に心臓病で突然死した。(藤井省三


・ダニエル・エヴァレット「ピダハンー『言語本能』を超える文化と世界観」(みすず書房
〜久しぶりに出会った腰が抜けるほどすごい本。アマゾンの奥地で知性は野生に完敗する。(服部文祥


池澤夏樹「ぼくたちが聖書について知りたかったこと」(小学館文庫)
〜秋吉輝雄を相手に池澤が聞き手になっている。実に面白い読み物に仕上がっている。(川口喬一)

・井上寛司「『神道』の虚像と実像」(講談社現代新書


・John Cage 「Silence: Lectures & Writings」
〜空白への恐怖を空疎なつぶやきで埋め、押し黙ることの深い消息を顧みることなく「説明責任」といったバナールな言葉で沈黙を問い詰める。そんな皮相な状況のなかで、ジョン・ケージの主著によって豊かな沈黙の流儀を半世紀の後にあらためて学び直す喜びははかり知れない。破綻しながら喧騒をまきちらすだけの社会に対し、いま私はケージ的な沈黙を貫きたい。その充満する沈黙が、私たちにあらたに語ることを要請するまで。(今福龍太)


・与那覇幹夫詩集「ワイドー沖縄」あすら舎
〜与那覇の詩には海のような「世界の無意識」が確かに孕まれ、息づいている。わたしはひそかに憧れる。このような「人格としての詩人」にいつか転生したい、と。(今福龍太)


 今福の推薦の言葉に込められた気合いに眼がとまった。未読の与那覇を読んでみたくなった。