ポランニーの転換、ロンドンの影響?

 ロンドン・オリンピックが始まった。ブリクストンと並び、ロンドンのヤバイ地域として有名だったハックニー地区に世界中から観光客が集まる日がくるとは…オリンピックと現代土木技術の力に驚くしかない。

 さて、カール・ポランニーの書評を読んでいて、ロンドンを見つけた。ちょっと無理があるが、これも英国シリーズにひとつということにしよう。

 国家にも市場にも還元されない経済社会の理想を探究したカール・ポランニー。主著「大転換」では理想の社会をあきらめるべきだとして、ある種の悟りの境地に達していた。


 ポランニーは当初、市場社会の弊害を、民主主義のコミューンでもって「透明化」することに関心を寄せていた。ルソー的な共同体の理想を抱き、労働者主導による協調組合社会(コーポラティズム)を展望した。ところがファシズムの支配から逃れるべく、ウィーンからイギリスへ亡命すると、それまでの理想を撤回。不透明な産業社会を前提とした上で、アリストテレス的な「善き生活」の理想を探究するようになった。


 ポランニーにとって「自由」とは、平和で平穏な生活を送ること、産業社会の幻想的な誘惑に踊らされないこと、効率よりも「善き生」を優先すること、等々の究極的な理想として位置づけられる。

「市場社会と人間の自由」(カール・ポランニ―、大月書店)の書評(橋本努)120722付け日経朝刊掲載

 この短い書評を読むと、それまでの理想を撤回したポランニーの転換にロンドンでの亡命生活が影響しているのではないかと感じた。ポランニーのロンドン生活どころか、ポランニーの著作自体をきちんと読んだ事もない不勉強な小生なので、単なる勘です。それにしても、ここで説明されているポランニーの「自由」からは、フランス革命ではなく、イギリス保守主義の匂いがたちのぼってくる。

 ポランニーについては、とりあえず松岡正剛の解説あたりをあげておく。

 http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0151.html


 ロンドンの亡命生活が生み出した有名な著作は、なんといってもマルクス資本論。これについては、後日に譲りたい。