負けて泣くな!

 ロンドン・オリンピックでは、日本人選手が泣く場面がこれでもかと続く。勝って泣くのは感動的だが、負けて泣くのは正直、みっともない。特に格闘技で負けて泣くのは、けんかで負けた子供が泣いているようで、余計みっともない。昔の日本人選手は、負けてこんなに泣いていたか。この大会でも外国人選手は負けて泣いているか。

 負けた時の対処の仕方に、その人の地金がのぞく。負けて泣いている柔道選手を見ていると、幼児退行の反映すら感じる。
ひと様がテレビ中継で見てくれるような派手な失敗には縁がないが、無名の人間にも小さな失敗が際限なく続く。「得意泰然、失意冷然」を肝に銘じたい。


 逆に勝利の涙は、ひねくれものの風船子ですら、ぐっとくる。

 特に、先日の卓球女子団体戦で銀メダル以上が決定したときの平野早矢香福原愛石川佳純の3人のうれし泣きは感動的だった。
 各紙の夕刊を見比べると、読売の夕刊の写真が一番よかった。とりわけ、試合の時には「鬼の形相」になる平野の、くしゃくしゃになったうれし泣きの表情はインパクトがあった。この日の夕刊は、ボルトの100メートル連覇もあった。各紙は一面をどうするかで悩んだと思う。ニュース重視の一面では、セオリーからいくと結果が判明した人気競技の、それも競技写真を使いたくなる。

 そのなかで、読売はまだ結果が確定していない競技の、それも競技写真ではない「笑い泣き」写真を思いきって一番大きく扱った。読者がすでに結果を知っているなかで、3人の勝利の感動を読者に反芻させる大ヒットだった。心に響いたので、この紙面に載った写真を切り抜いた。なんだか強力なお守りになりそうな気がする。