お母さんって、誰なの?

お母さんは
ボクがいないときには
いったい
誰なの?


 新聞を斜め読みしていて、はっとする文章に出会った。上記の一文は、毎日新聞7月8日付朝刊に掲載された「郵便配達と夜の国」(大庭賢哉青土社)の書評からの引用文である。


 この作品は未読なので、どのような文脈での問いかけなのかはわからない。しかし、この一文で、遠い少年時代の幼い妄想を思い出した。


 ボクが学校に行っている間や寝ている間に、お父さんとお母さんは、どこかボクの知らない世界に出かけ、ボクのことなんか忘れて何かをしているのではないか…そんな妄想だった気がする。


 自我の芽生えは、「自己以外は他者」との認識の発生でもある。それは、自分と一体と思っていた母親のなかにすら「他者性」をみることにもなる。心理的な「母子一体」の時期から自我が目覚めてくる幼年期に生じる不安を、上記の問いはうまく言い当てている。