ヒッグス粒子・素粒子の種類はいくつ?

 ヒッグス粒子の発見は大ニュースだったが、気になったのは標準理論で予想された素粒子の種類の数。調べた限り、毎日新聞だけが18種類で、主要紙やNHKは17種類だった。報道翌日の毎日新聞にはどこにも訂正記事がなかったので、毎日新聞本社に問い合わせてみた。


 「ヒッグス粒子の件ですが…」と切り出すと、電話口に出た読者対応の女性はすぐに、「17か18かのお話ですね」と反応した。他にも同じ問い合わせが多数あったのだろう。


 回答は、以下の通り。

 素粒子のなかに力を伝える粒子があるが、そのなかの「弱い力を伝える粒子」であるウィークボソンには電気的にプラスとマイナスのものがあり、これを一つとするか分けて数えるかで、17種類説と18種類説に分れる。毎日新聞としては、分ける説をとっており、18種類として報じている。

 なるほど。ただ、日本での報道のほとんどが17説なので、毎日新聞がミスをしたと誤解する読者が多いのではないか。17説と18説の両説があると記事のどこかに入れておけば、誤解も防げるし、素粒子の存在の不思議を伝えることにもなったのに…とおせっかいにも思った次第だ。


 ちなみに素粒子標準模型として知られている図には、ウィークボソンは2種類ではなく、1種類として記載されている。BBCもこの図を紹介している。

 http://www.bbc.co.uk/news/world-18702455


 素粒子物理学には大いなる関心があるが、まったくの門外漢なので、手元にある関連図書は、「宇宙は何でできているのかー素粒子物理学で解く宇宙の謎」(村山斉、幻冬舎新書)ぐらいしかない。そのなかにあったウィークボソンの説明を参考までに要約してみる。

 ボソンの名は、インド人物理学者ボースに由来する。


 1個のリンゴがある空間にもう1個のリンゴが置けないように、電子など12種類の素粒子は同じ空間に重なって存在することはできない(パウリの排他原理)。しかしボソンは、排他原理に従わずに、同じ場所にいくらでも詰め込める。たとえばボソンの一種である「光子」(光のこと)は、レーザー光線のようにいくらでも重ねて強くすることができる。


 弱い力を伝えるボソン(ウィークボソン)はなかなか見つからず、1983年にようやく発見された。


 ウィークボソンには、電荷を持つ「Wボソン」と電荷を持たない「Zボソン」の2種類があり、「Wボソン」には電荷がプラスのものとマイナスのものがある。


 村山氏は、Wボソンを電荷の区別なく「1種類」と数え、そのなかのプラス、マイナスの電荷部分については、「もの」としており、一応、違う単位でカウントしている。17説といえるかもしれない。


 ともあれ、Wボソンを1と数えるか、電荷に従って2にするかは、学問的には大きな意味はないと思われるが、毎日新聞のおかげで少し自分なりに勉強できた。