痛すぎる救済、KOTOKO

 映画「KOTOKO」(塚本晋也監督)を新宿で観る。


 あきらかに過剰だが、過剰でなければ伝わらないものもある。

 冒頭の10分で、過剰な「痛み」に耐えかねて久々にスクリーンの前から逃げ出したくなった。ネットの映画評に「体調を整えてから観る映画」とあったが、その通りだった。幸い、体調は良好だったので、完走できた。観る者が試される圧倒的な映画だった。


 主演のCOCCOは、はまりすぎて、演技というより憑依といった方が正確かもしれない。人が狂う境界まで「健常者」である観客を強引に連行してくれる。自己も含めた人間に対する徹底した絶望、その絶望感の深みに降りていって初めて体感できる救済…「ヒミズ」を思い出した。


 映画終了後、塚本監督が登場しての片桐はいりとのトークがあった。作風からはまったくかけ離れた、とぼけた表情のおっさん。このコントラストも良かった。苦労を売り物にせず、苦労が伴う高いレベルの仕事を飄々としてこなしていく。このオッサン、えらいわ。