初めて被災地に

 テレビ画面や写真で数え切れないほど東日本大震災の被災地の惨状を目にした。しかし、大規模災害は、その場所に行ってみないとその規模が実感できない。

 仙台に出張したので、仕事が終わったあと、駅前からタクシーに乗って海辺に向かった。運転手に「被災の現場に行きたい」と告げると、若林区荒浜につれていってくれた。20分ほど走ると、海岸線と平行に走る高さ五メートルほどの土手の上を道路が走っている。この道路までは、被災をまったく感じさせない住宅地が続いていたが、この道路のガードを抜けると、突然、視界が広がった。というか、何もない。ただ夏草が生えた平地が広がっているだけだ。「ここあたりも、住宅や商店がたくさんあったんだけどね」と運転手が解説してくれる。地面の凸凹がまったくない海のそばの平地では、津波から逃げる術はない。

 ところどころに集められた瓦礫の山が目に入る。道路を走っているのは、瓦礫を運ぶトラックばかりだ。海に向って行くと、ガソリンスタンドがあった。正確にいえば、津波以前はガソリンスタンドだったところだ。鉄柱がぐにゃりと折れ曲がっている。目をこらすと、遠くに仙台中心部の高層ビル群が見える。

「消えた街」を少しだけ、実感できた。