病としての「占有」

 人類には700万年の歴史がありますが、その大半の時間、飢餓と不足と欠乏にさいなまれていました。そのため足るを知るリミッターはほとんど必要なかった。だから(人間は)現在、どんなものでも必要以上に占有しがちになる。土地を占有し、お金を占有し、男は女を占有し、女は男を占有する。


 他のほとんどの生物は、分を知っていて、自分が食べる食べ物はこれ、自分が行動する半径はこれくらい、鳴き合う周波数はここというように、資源をすみ分けて禁欲していますね。すべての生物が、あらゆるところに棲息しつつ、自分の分を守って、そこで情報、物質、エネルギーをパスし続けている。ものすごく多数でたくさんの球をけり合い、勝ちも負けもないサッカーをやっているようなもの。


 ところが人間は、根深く占有という呪縛に固執して、そのパスを滞らせ、結果、自然が持つ持続可能性を阻害してしまう。


 福岡伸一談話、朝日新聞(10年8月22日付け朝刊)

 いつもの福岡節。ときどきは、こうした角度からモノをみないと、ね。