「ノンビリ」には勇気と知恵

 森さんは大学定年後、ますます忙しくなり、マスコミ、ジャーナリズムに引っ張りだこだった。
 どんなに忙しくても、森さんはノンビリしていた。ノンビリするには勇気がいる。我慢がいる。とりわけ知恵がいる。というのは、世の中の構造が、せかして、動かして、引きまわすようにできているからだ。

 池内紀、(産経新聞、8月1日付け朝刊)

 森さんとは、先月亡くなった数学者の森毅さん。日本では、マスコミに登場する自然科学者たちに、専門とは全く無関係に「人としての正しい道」なんぞを説きたがる説教ジジイが目立つ。森氏は、こうした連中とは正反対の場所にいた。