存在論珍道中(1)

◆「存在論珍道中」(1)

・本日より、「Heidegger a very short introduction」(Michael Inwood, Oxford)(以下、Hsと略)を手がかりに「存在と時間」を再読する作業を始めることにしました。
存在と時間」は、日本語版は細谷貞雄訳の「ちくま学芸文庫」、英語版はJohn Macquarrie & Edward Robinson訳の「BEING  AND TIME」(Blackwell)を使用します。

英語をテコにすれば、「あらたな理解」、いや、独学者の特権である「前人未到の誤読」を楽しめるのではと期待する次第です。誤訳だらけの独りよがりの愚行になることは不可避です。
親切心と義侠心ある読者の方から、「あまりにひどすぎる。見ちゃおられん」ということで、当方の初歩的間違いをご指摘いただければ、望外の喜びです。読者自体がいるとは思えませんが、よろしくお願いします。

Inwoodの本は、オックスフォード大学出版が出している「very short introductions」シリーズの一冊です。このシリーズは、ポケットにはいるほどの小さな本ですが、思想、宗教、歴史など広範はテーマについて扱っています。英書では、硬いテーマの文庫本は珍しいと思います。

寄り道、休憩自由の「我流存在論の旅」。この旅に最終目的地はありません。長い旅になりそうです。マイペースで続けていきたいと思います。

それでは、「存在論珍道中」の出発。

・初日は、「第1章 ハイデガーの生涯」から。小生の私見は<>内に記します。

・冒頭の部分です。

 He was (with the possible exception of Wittgenstein) the greatest philosopher of the 20th century. He was (with the possible exception of Hegel)the greatest charlatan ever to claim the title of ‘philosopher ‘, a master of hollow verbiage masquerading as profundity.

(訳:ハイデガーは(おそらくヴィトゲンシュタインを除けば)、20世紀でもっとも偉大な哲学者だった。彼はこれまでで(おそらくヘーゲルを除けば)、「哲学者」の資格があると主張する、もっとも偉大なペテン師だった。「哲学者」とは、中身のない冗長な言葉を深遠だとごまかす達人のことだが)


<通例、こうした本の通例は、対象となる人物の「偉大さ」をストレートに強調することから始まる。しかし、そこは皮肉好きの英国インテリ。まず1球目は変化球から入ってきた。>

このあと、インウッドは、ハイデガーについて、「 an irredeemable German redneck(救いようのないドイツの貧乏な田舎野郎)で、self-important Nazi (尊大なナチ野郎)」との酷評もあれば、「ナチズムの批判者でもあり、現代のさまざまな悩みについての見識ある分析者であり、その解決にとっての最良の希望でもある」との賞賛もあると紹介する。

そして、こう問う。

Who was the man who provokes these contrasting reactions?
(こうした対照的な反応を巻き起こす男とは、どんな人物なのか)