三輪寿壮と不思議な夢

 先日、両親の法事で九州の実家に帰った。無人になった築50年の家に寝ていたら、不思議な夢をみた。
 
夢で、だれかが、三輪寿壮を例にあげ、右翼運動が必然的に分派を生んでいく仕組みを理路整然と説明していた。「これは日本の右翼運動一般に適用可能な理論」と私はいたく感心して聞いている。待てよ、「三輪寿壮」ってだれだっけ…

 ここで目が覚めた。まだ午前3時ごろ。意識はぼんやりしているが、夢の記憶だけは鮮明だ。三輪寿壮の名前もはっきり残っている。戦前の左派政治家だった気がするが…。起き上がり、「三輪寿壮、右翼分裂理論」とだけメモして、また寝た。

 翌朝、ネットで三輪寿壮を調べる。人名の漢字表記は夜中のメモで正しかった。三輪は、戦前の労農党の政治家で戦時中は大政翼賛会で活動、戦後は社会党統一に貢献した政治家だった。私と同郷で出身高校も同じだった。
それにしても、なぜこの人物が突然、夢に出てきたのか、まったく不可解だ。

 戦前の政治史に昔から個人的関心はあるが、文章、テレビ、知人との会話、どれをとっても三輪寿壮に結びつくものは過去に遡っても記憶に一切ない。もちろん、会社の仕事とは何の関連もないし、同郷といっても親戚や知り合いとも関係がない。

 ただ、三輪の名前の漢字表記を知っていたので、どこかで接点はあったと思う。おそらく戦前の転向研究関連の文献あたりかと思うが、それとて35年近く前の学生時代だ。


 通常、夢に出てくる突飛な人物もよく考えると何かの原因が考えられるが、今回はまったくのミステリーだ。
 

 あれから2週間。折に触れて、記憶の底をさぐっているが、手がかりは見つからない。三輪も夢には出てこない。

 不可思議なり。