高純度のマフィア映画「ゴモラ」

 イタリア映画「ゴモラ」を観た。イタリアのお家芸だったネオリアリズモを継承する見事な出来だった。

 ヤクザ稼業にじゃまなものは殺す。映画は、このシンプルな原理に貫かれたマフィアの世界を描いているが、どれも犯罪の部分的エピソードであり、組織全体の正体には触れない。これも作品に現実感を与えていた。快作だ。

 説教臭さは微塵もなし。美男美女はほとんど出てこず、よくぞ、これだけ悪そうな顔したデブを集めてきたもんだと感心した。これに比べれば、「ゴッドファーザー」は、新派の舞台のようなものだ。

 題材になっているのは、ナポリを拠点にするイタリアの4大マフィアのひとつカモッラだ。他のマフィア組織が農園の現地管理人と武装自警団を起源とするのに対し、カモッラは刑務所で囚人たちが結成したグループが始まりだという。それだけに勢力拡大には限界があるが、犯罪組織としての純度は高いのかもしれない。