英大衆紙のワールドカップ評

この年になると、時差ぼけの症状が出るのに時差が生じる。まだ、なんだかボーッとしている。加えて千客万来、雑事殺到で、ブログ更新が滞っていた。

 さて、今回の出張では、古巣ロンドンはヒースロー空港にトランジットのために計3時間いただけで、まったく街に出られなかった。この空港は店だけはたくさんあるが、ロクなものは売っていない。ただ、風船子には、お目当てのみやげものがある。大衆紙だ。

大衆紙は、以前、タブロイドと呼ばれていたが、今や、タイムズもガーディアンもブロードシート(日本の一般紙のような大きな紙型)からタブロイドになり、「タブロイド大衆紙」の等式は崩れてしまった。

 日本でタブロイドというと、「夕刊ナントカ」を思い浮かべる。1面には政治ダネがあるが、一般紙にくらべると報道量も部数も圧倒的に少ない。しかし、英国では発行部数の一位は大衆紙「サン」だ。毎日、第3ページに大きなヌード写真が掲載され、スポーツ紙のようにお色気、スポーツ記事も多いが、政治、経済もそれなりの記者がいて、影響力は大きい。ページも60ページ前後あり、読み応えがある。

 さて、空港売店の新聞売り場をあちこち探してみたが、お堅い新聞はあるが、「サン」が見つからない。広い空港を歩き回り、ようやく見つけた。値段は、20P(約40円弱)。以前は、こんなに安くなかったはずだが。

 まず、1面をめくると、20歳のやや太めの女性が胸もあらわににっこりほほ笑んでいる。「ページ3」は健在だった。
紙面はやはりワールドカップが主役だった。購入日は6月30日。まだイングランド敗戦直後だ。一面は、スクープ写真がでかでかと掲載されている。サッカーのイングランドチームのメンバーが、屈辱の敗戦から数時間後、ビールを飲み、葉巻をすいながら談笑している写真だ。

 社説は「オウンゴールだぜ、おまえたち」の見出しで、「プライドはどこへいった」と選手たちをコテンパンにこきおろしている。
「このバカたれ連中は、国家的な屈辱の時に、大酒飲んでパーティーしているとは、どういう神経しとるのか」。


ページをめくると中央部の見開きページを全部使って、日本の敗戦を伝える記事が載っていた。中央にはPKをはずして頭を抱える駒野選手の写真がある。扱いは大きいが試合評は辛辣だった。

 「イングランドアルジェリアと同様、今大会で最悪のゲーム内容だった。日本は終始、おされっぱなしで、二時間もこんな試合をみるのはつらかった」

 日本では、いまだに「よくやった、日本」の報道が続いているが、こうした厳しい評価も知ってもらいたい。