「穏健派」不在のシリア情勢

 高橋和夫・放送大教授が日経書評(5月13日付け)でシリア問題関連書籍を紹介していた。大枠理解の参考に。

 『シリア情勢』(青山弘之、岩波新書
→シリア情勢はアサド大統領が悪人で反体制派が善人という善人という勧善懲悪の物語ではない。しかも世界が期待を寄せてきた「穏健な反体制派」は幻想であり、実際には存在しない。この現実に依拠しない限り、シリアは理解できない。

『中東とISの地政学』(山内昌之・明治大特任教授編集、朝日新聞出版)
→山内教授によれば、シリア情勢の構図を貫く大きなベクトルはプーチン・ロシアのシリアへの本格的な介入である。逆に米国は「穏健な反対派」と呼ばれる勢力に及び腰の援助を与えたのみだった。それゆえにアサド体制が生き延び、反体制派は敗退した。
 シリアにおいてロシアの主導権を認め、そのかわりにイラクは米国がリードするというディール(取引)が、トランプとプーチンの間に成立するだろうと山内教授は大胆に予想する。